【共生社会レポート⑪】今日はどこ行ぐ?次も頼むね!送迎サービス「おらいのくるま」

 宮城県地域共生社会推進会議では、宮城県内の困りごとを抱えた高齢者・障害・子ども等の分野を超えた支援や地域住民の支え合い活動及び自治体・社協・福祉関係団体、NPO、企業などの連携事例を調査し、活動内容などについて情報発信を行っています。
 今回は白石市小原地区で行っているボランティア送迎「おらいのくるま」の取組について、小原地区振興会の半沢氏に取材してきましたので、ご紹介したいと思います。

インタビュー:小原地区振興会 事務長 半沢 氏

-この取組を始めた経緯を教えてください-

 白石市小原地区は、市内で最も人口が少なく、高齢化率が高い地域で、買い物や通院で不便を感じている人が多くいらっしゃいました。
 白石市では、『既存の公共交通では対応できない山間地域などにおける住民主体の新たな移動・外出サービスの整備に取り組む』方針としており、また小原地区が策定した地区計画の具体的な取り組みの一つに交通弱者に対する移動手段の確保を掲げていることから、令和5年度に、小原地区振興会、自治会長、民生委員、住民、市職員等と共に「地域内交通を考える会」を4回開催し、地区の実状に合った地域内交通の在り方を模索してきました。
 検討を重ねる中で、住民ボランティアの自家用車を使い、地域の新たな移動手段を確保しよう!と、具体的な方針や手法が決定し、令和6年1月16日から、住民の移動を支援する実証実験を開始。令和6年6月6日には、本運行を開始しました。「おらいのくるま」というネーミングは小原地区のみんなで考えました。

 

-この具体的にどのような取組をされていますか-

 住民ドライバー(登録ボランティア)が自家用車を使用して、住民の送迎を行っています。事前予約制となっており、予約の受付やドライバーの調整は、小原地区振興会(まちづくり協議会)が行っています。

運 行 日:毎週木曜日&公民館行事の日 
運行時間:行き 午前9時頃  帰り 午後2時頃
利 用 料:50円(片道:ガソリン代実費相当額)
運行場所:自宅前、地区内のバス停、小原温泉、小原公民館、各集会所、郵便局、小原小中学校、材木岩公園
利用できる人:小原地区在住の方で自分で乗降可能な方

任意保険料や安全運転者講習費等は、白石市の交付金で賄われています。

 

・・・・・・・・・・・・「おらいのくるま」ドライバーの想い・・・・・・・・・・・・・

 ボランティアでドライバーをしてくださっている小室さんは、住民の送迎を通じて地区内で顔見知り程度であった方々と親しくなり、交流を深めることができること、地区の役に立てることにやりがいを感じていると言います。雪が多い地区なので冬場は配慮が必要なことも多く、送迎時には待ち時間が発生するなど大変さもありますが、地域の一員として今後も出来ることを続けていきたいと話されていました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

-今後の展望を教えてください-

 始まったばかりで、まだドライバーも利用登録者も少ない状況ですが、今後は運営委員会の中で自治会長や民生委員と連携し、ドライバーの確保、ボランティア送迎の周知に取り組み、地区の送迎を必要としている方々に活用していただけるよう努めていきたいと思います。「おらいのくるま」が持続可能な地域内交通のモデルになれば良いと考えています。

取材をとおして

 「おらいのくるま」の取組は、白石市小原地区の現状とこれからを、行政、関係団体、住民が共有し、膝を交えて話し合い、一丸となって課題解決に向けた知恵を出し合い、それぞれができることを提案し実践に移すことで実現しました。言うは易し、行うは難しと言いますが「持続可能な地域の未来を作る」ためには、最重要で不可欠なことであると改めて考えさせられました。関わっているボランティアの方々もやりがいを感じており、住民の方々の感謝の想いが財源につながるなど、地区の皆様の想いで成り立っている「送迎ボランティア」であると感じました。
 買い物や通院、地域行事への参加等、住民の移動手段の課題を抱える地域は県内に多くあります。「おらいのくるま」の取組を地域内交通のモデルとして、「地域の実状に合った地域内交通」「移動手段に課題を抱える方々への解決策」についての検討が県内で広くなされ、誰もが安心して暮らし続けることのできる地域づくりにつながることを期待します。