宮城県地域共生社会推進会議では、宮城県内の困りごとを抱えた高齢者・障害・子ども等の種別を超えた支援や地域住民の支え合い活動及び自治体・社協・福祉関係団体、NPO、企業などの連携事例を調査し、活動内容などについて情報発信を行っています。
今回は富谷市社会福祉協議会(以下「富谷市社協」という。)が富谷市の小学校福祉委員会と共同で行っている取組について、富谷市社協の担当者に取材してきましたので、御紹介したいと思います。
福祉委員会とのコラボ事業 インタビュー:富谷市社協 菅 裕輔 氏
-取組を始めた経緯を教えてください。
富谷市社協では、これまで、毎月1回地域の子どもたち(小学6年生対象)に富谷市社協に来ていただき、福祉について理解を深める「こども富谷福祉塾」(以下福祉塾)という取組を行ってきました。「福祉塾」は障がい・高齢者・防災・世代間交流など、福祉の講座を年12回に分けて放課後に開催していました。これまで、6期生まで卒業しましたが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、令和元年度を最後に中止となりました。コロナ禍、もっと多くの子どもたちに福祉や地域を知ってもらいたいという思いから、小学校の委員会活動の一つである「福祉委員会」の活動を知り、富谷小学校に打診したことから、福祉委員会とのコラボモデル事業が出発しました。
令和4年4月から富谷小学校をモデルとした取組が開始され、毎月1回15~20分程度の限られた時間の中で、2カ年計画で実施しました。1年目は社協とも関連があるエコキャップ回収や募金活動を深く理解し、校内全児童への啓発活動を通して、広めるための手法を考えるなど、普段の暮らしの幸せについて考えるきっかけになりました。2年目は、1年目の活動を基礎とし、学校内外での地域の人との関わりから、自分たちにできることを考える時間を多く確保しました。そして実践を通して、地域課題に対して主体的に改善しようとする意識を醸成することを目標にしてきました。
基本的な進め方としては、➀現在の活動や地域を知る⇒➁考える⇒➂計画を立てる⇒➃実行する⇒➄活動の振り返りを各年行うような形にしています。もちろん、学校の先生方とも連絡調整しながら進めるように心掛けています。
-具体的にどのような取組をされていますか?
富谷小学校では、例えば、1~2回目は「社協について」や「エコキャップを回収することで、途上国の子供たちにワクチンが届けられる過程」などについて知ってもらう時間とし、3回目以降は地域に対して自分たちができることについて子どもたちが主体となって考え、委員会の子どもたちの意見を基に、エコキャップ回収活動のためのポスター作成や回収BOXの増設などを行いました。令和5年度には地域の防災センターにも回収BOXを設置しています。参加した子どもたちの感想を見ると、「自分の仕事に責任をもってしっかりと取り組めました」「エコキャップBOXをみんなでどうしたらより良くなるか考えたことです」など責任をもち、仲間と協力して、自分たちでできる地域に役立つことを考えるきっかけになったと考えています。
令和5年度から成田小学校でも取組を開始しました。コロナ禍による外出制限など普段の生活ができない高齢者施設の入居者の方々に、これからも元気に過ごしていただきたいという福祉委員会の子どもたちの思いが、コースターとメッセージカードの制作活動につながりました。そのお返しとして、高齢者施設からビデオレターをいただき、「1年間頑張って良かった」との児童からのコメントや「良い体験ができて、最後に形になって良かった」と先生からのコメントをいただきました。児童だけではなく先生や学校、地域のご協力があるからこそできる事業であると感じています。
-この取組の良い点を教えてください。
家や学校以外にも、自分たちが住んでいる地域の中に自分の役割があることを知るとともに、自分が作ったものが地域の役に立っていることを実感し、それが達成感につながれば良いなと思います。その達成感のもと子どもたちが地域の行事やボランティア活動に参加し、自分の地域に関心をもってほしいと思います。
-今後の展望を教えてください。
この取組を通じて、市内の他の小学校でも理解が広がり、将来的には市内にある8校すべての小学校で取組を行えたらと考えています。しかし、年間を通して全ての小学校で行うことはなかなか難しいので、2年ごとに順番に行うなど方法を検討しながら、この取組を少しずつ市内に広めていきたいと思っています。参画した学校が2年のコラボ事業を終了した後は、中学校に行く子どもたちが地域の行事やボランティア活動に参加し、自分の地域に関心をもってほしいと思っています。学校では、先輩方が継続してきた、学校独自の取組を学校内外での活動に繋げてほしいと感じます。
取材を通じて
今回、富谷市社協が富谷市内の小学校と共同で行っている福祉委員会での取組について、御紹介しました。事業が始まって3年目を迎えたばかりですが、子どもたちの豊かな発想力が地域をつくる一助になる可能性を感じました。
今後も各地域の取組について、情報を発信していきます。