宮城県地域共生社会推進会議では、高齢・障害・子ども等の種別を超えた団体の活動や地域住民の支え合い活動を調査し、県内に広く普及できるよう情報発信を行っています。
今回は、東松島市の柳北地区で開かれている地域共生食堂の取組について、だんらんかぞく会長の昆野美津子氏に取材してきましたので、御紹介したいと思います。
だんらんかぞく 会長 昆野美津子氏
-活動のきっかけを教えてください。
◆2018年に柳北自治会で「ありあけだんらん食堂」の活動を始めました。子どもから高齢の方まで毎月100~120人程が集まり、集会所で皆と食事をして、食事が終わったら、和室でこどもたちが遊び、大人は親睦を深める。そのような住民同士顔の見える関係性を育む大家族のような集まりの場でした。
◆新型コロナウイルス感染症の影響で、活動の場は休止を余儀なくされ、交流機会の減少、孤食の増加など、「ありあけだんらん食堂」と地域で積み重ねてきた顔の見える関係性が薄くなってしまいました。しかし、皆で食事をすることや交流を楽しみにしている地域の方、ボランティアで活動している方の、“皆と集まりたい”という声が多く、2020年に「ありあけだんらん食堂」の形を変えた任意団体「だんらんかぞく」を立ち上げました。
-「だんらんかぞく」の取組を詳しく教えてください。
◆「だんらんかぞく」では、感染予防のため集まる人を減らすようひとり親世帯や生活困窮世帯の方を対象にして、応援食堂という形で活動を始めました。最初は1世帯のみでしたが、行政や包括、市社協、保育所、民生委員児童委員などの協力もいただきながら徐々に参加者が増えていきました。しかし、緊急事態宣言の影響もあり配食に切り替えることになり、今では30世帯で100食程のお弁当を作っています。配食を続ける中で、集まって話して交流する会食の形式に戻したいという思いが強くありました。
-「ありあけだんらん食堂」「だんらんかぞく」をとおして、地域の方にどのような変化がありましたか?
◆保護者が色々な情報交換をするのが目に見えて分かりました。隣の家族同士で顔を合わせる機会が増えて、普段から挨拶を交わし、防犯の意味で見守りにもなっていました。近所の高齢の方は、はしゃいでるこどもを見て嬉しそうにし、「元気をもらえる」と毎回参加してくれました。一人暮らしの方も参加したことで、地域とのつながりづくりにもなり、自然体のコミュニティづくりになりました。
-活動をする上で意識していることはありますか?
◆駄菓子屋や駄菓子博というイベントも開催しました。こどもだけではなく、お父さん、お母さん、デイサービスの利用者なども一緒に来てくれました。
◆来てくれる方みんなが楽しめるように、ワークショップやフリーマーケットの企画、パン、お惣菜、花の販売などたくさん内容を考えました。対象者を決めず、こだらわないで皆で楽しむことを心掛けたら500人くらいの参加がありました。
-今後の展望について教えてください。
◆今後は会食形式に戻して、以前のようにわいわいがやがやしながら交流できる食堂にしていきたいです。集会所に本を置いて図書館のようにして、食事の他にも、おじいちゃんおばあちゃんも来て、ただ本を読んでみたりゆるやかに集える場にしていきたいです。
◆その他にも、障害のある方の作品展覧会を行いたいと考えています。こどもや地域住民が障害のある方と接することで、その人たちに対する理解や考え方が少しでも変わるきっかけになりますし、こどもの頃からたくさんの人と関わることで、本当の地域共生ができると思います。
取材を終えて
今回、代表の昆野氏を取材するにあたり、東松島市社会福祉協議会の生活支援Coの眞籠氏と土屋氏も同席してくださいました。昆野氏の温かいお人柄と地域での活動を長年愛情をもって取り組んでいる姿は、地域住民のみならず活動を後方支援してくださる団体とのつながりづくりになっているとのことでした。
昆野氏によると、活動を始めた当初は、こども食堂は貧困対策のためにあると思われがちだったため「ありあけだんらん食堂」「だんらんかぞく」という名前には、「地域にいる皆が笑顔で集まるところということを広めたかった。」という思いが込められているとのこと。地域交流の場として大切な役割を果たしている「だんらんかぞく」の活動の今後にも期待したいと思います。