【共生社会レポート⑧】ストーリーのない合同炊き出し訓練~学生自身が考える防災~

 宮城県地域共生社会推進会議では、宮城県内の困りごとを抱えた高齢者・障害・子ども等の種別を超えた支援や地域住民の支え合い活動及び自治体・社協・福祉関係団体、NPO、企業などの連携事例を調査し、活動内容などについて情報発信を行っています。

 今回は柴田農林高等学校川崎校と岩沼高等学園川崎キャンパスが合同で開催し、川崎町や川崎町社会福祉協議会、ボランティア友の会、社会福祉法人鶴寿会 川崎ドリームの郷(以下、「ドリームの郷」という)の方々が参加している防災訓練について紹介します。

インタビュー:柴田農林高等学校川崎校 教諭 山口 裕之 氏

-防災訓練について、教えてください。

 この訓練は通常の避難訓練と、台本や教師からの指示がない炊き出し訓練の2部構成となっています。

 まず校舎内での地震・火災を想定した避難訓練では、各教室から生徒たちが教師の指示の下、避難します。避難完了後、消火訓練などを行い、教師による模擬緊急会議の中で「生徒だけで自宅に帰ることは危険なため、学校体育館に避難することとなった。地域の方も体育館に避難してきており、救助があるまで食住の確保をしなければいけない。生徒たちで協力してすべての準備を行ってもらう。」ことが決定され、生徒たちに伝えたところから、この訓練のメインである炊き出し訓練が始まります。

▲消火訓練中

 生徒たちは卒業すれば地域住民の一人として責任を持つ立場となるため、災害の場面でも積極的に役割を果たせる人になってほしいという願いがあります。また、実際に被災する際には、外出先や家庭、スーパーの中など、学校のように指示を出してくれる人がいない状況も多々考えられます。炊き出し訓練を生徒たちだけで役割を分担して行い豚汁、おにぎりの調理をします。また、体育館に段ボールを用いて居住スペースやベッドの確保を行い、避難所受付を開設し避難者名簿を作成します。

-地域住民や関係団体との協働について教えてください。

 この炊き出し訓練は、地域のボランティア友の会や高齢者施設を運営している社会福祉法人、町の福祉課、町社会福祉協議会にも参加してもらいながら行われます。

 福祉課や町社会福祉協議会には、生徒の非常時の対応能力向上を図るために屋外用ガスコンロの使い方など取扱説明をお願いしています。

 ボランティア友の会方々には、炊き出し調理を生徒ともに行っていただき、ドリームの郷の方々には避難者役として参加していただき炊き出しの料理を食べていただきました。


▲ボランティア友の会のみなさんと食材準備中!  ▲参加者全員分の豚汁作成用鍋を運びます。

 これらは、生徒が避難者への対応方法や調理方法について学ぶ機会になっていると思います。

取材を通じて

 炊き出し訓練に参加した生徒たちが自分たちで調理班・かまど班・避難者運営班に役割を分担し、お昼までに完成するように訓練していたのが非常に印象的でした。後輩たちに指示を出すために色々考えている生徒、先輩たちの動きを見て率先して動いている生徒、作業をしながらも楽しそうに活動している生徒、積極的に施設の利用者さんとお話する生徒など様々な姿を見ることができました。
▲生徒たちで班分けの打合せ中

 本取組のように生徒たちが自発的に考え、災害に備えていく活動は発災した際に大きな自信につながる活動と感じました。また、地域に住んでいる方々とも触れ合い、地域における学校の役割についても学ぶ機会になっていると思いました。

 本会では今後も地域共生社会の実現に向けて、地域づくりに積極的に関わっている企業や団体の取組について、広く情報を発信していきます。