宮城県地域共生社会推進会議 設立会議における大橋謙策氏 記念講演

 さる令和4年2月9日(水),「宮城県地域共生社会推進会議 設立会議」,特定非営利活動法人日本地域福祉研究所 理事長 大橋 謙策氏(元東北福祉大学大学院教授)より,「地域共生社会の実現に向けて」と題し御講演いただきました。その内容について,一部を御紹介します。

▲記念講演をされている大橋謙策氏

 

戦後社会保障の節目「第3の節目」として地域共生社会政策

 厚生労働省は,地域共生社会政策を戦後第3の社会保障・社会福祉の節目として位置づけている。第1の節目が1961年国民皆年金皆保険,第2の節目が2000年介護保険,そして地域共生社会政策が第3の節目である。

 第1の節目の国民皆年金皆保険,第2の節目の介護保険は白紙の状態で制度設計をしてきたが,第3の節目である地域共生社会政策は,新たな制度を設計するのではなく,福祉6法体制に基づいて縦割りになっていたものを,横断的に再編成しようということである。それは多くの国民が持っている社会福祉意識や福祉関係者の意識を変えなければならないことであり,ある意味白紙の状態で制度設計すること以上に難しい。地域共生社会を創っていくためには,従来考えられてきた社会福祉の見方・考え方を,多面的に見直さなければいけない。その見直すべきポイントとして,包括的支援と重層的支援のシステム化が挙げられる。

 

地域共生社会における包括的支援システム

 包括的支援システムの好事例は,長野県茅野市。高齢分野の地域包括支援センター,障害分野の基幹相談支援センター,地域活動支援センター,子ども分野の利用者支援事業,地域子育て支援拠点事業,生活困窮者支援分野の生活困窮者自立相談支援機関,これらが包括化されることで,地域共生社会の包括的支援の相談体制が築かれる。

 

地域共生社会における重層的支援体制

 厚生労働省は,重層的体制整備事業について,相談支援,参加支援,地域づくり,アウトリーチなどを通じた継続的支援,多機関協働,支援プランの作成などを重層的に構築し,切れ目なく,隙間のない支援の仕組みを作ることを各市町村に望んでいる。

 その隙間のない支援の仕組みを作るための具体例として,生活支援体制整備事業が例として挙げられるが,高齢者分野では市町村圏域を第1層,地域包括支援センターを第2層,小学校圏域を第3層とし,圏域ごとに生活支援コーディネーターの協議体を設置している市町村が存在する。今後全世代対応型の包括支援システムを構築していくためには,障害者分野,子ども・子育て分野でも,第1層圏域のみならず,日常生活圏域ごとに協議会を設置することが必要である。地域共生社会を実現するためには,これらのような包括的支援,重層的支援のシステム整備が課題であると考える。